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2017年1月号 口腔内の発赤と疼痛を伴う病変
3.義歯性カンジダ症

  口腔カンジダ症は急性と慢性に分類される。前者には急性偽膜性カンジダ症と急性萎縮性カンジダ症がある。急性偽膜性カンジダ症は、容易に剥離できる小斑点状の白色偽膜を認め、偽膜を除去しても粘膜の発赤はほとんど認められない。一方の急性萎縮性カンジダ症は白色の偽膜を除去すると口腔粘膜に点状あるいは斑状の発赤が認められ、偽膜を認めず単なる点状あるいは斑状の発赤を認めるだけのこともある。慢性カンジダ症には慢性肥厚性カンジダ症と慢性萎縮性カンジダ症があり、前者は偽膜性カンジダ症が慢性化することにより粘膜上皮が肥厚するもので、後者は萎縮性カンジダ症が慢性化するか、あるいは、偽膜性カンジダ症の慢性化に伴い粘膜が萎縮するものである。

  その他、特異的なものとして、口角炎、義歯性口内炎および正中菱形舌炎がある。義歯性口内炎は慢性萎縮性カンジダ症の一つで、あきらかに義歯の装着が原因で義歯床下粘膜に認められ、点状、斑状の発赤を認める。義歯の存在は、義歯の粘膜面と粘膜の間に微生物叢の変化とプラークの蓄積を生じ得る。義歯によって誘発された口内炎は、多くの場合、義歯と床下粘膜の両者に蓄積した微生物叢に起因する。原因菌種は主にCandida albicansC. albicans)であるが、それ以外のCandida属としては、C. glabrataが最も多い。

  口腔カンジダ症の診断は比較的容易で、典型的な偽膜性カンジダ症は、白色の偽膜が擦過することにより剥離できる。萎縮性カンジダ症は、紅板症などの口腔粘膜疾患との鑑別が困難な場合がある。いずれも、口腔カンジダ症が疑われる場合は、塗抹標本のグラム染色や培養検査によりカンジダ菌の存在を確かめる必要がある。

  口腔カンジダ症の治療は、まずは原因を探求し、それを除去することである。口腔内が不潔な場合や口腔乾燥が認められる場合は口腔ケアを行い、そのうえで、抗真菌薬や消炎剤を投与することが大切である。

  本症例では、白苔や白色偽膜を明確には認めなかったが、萎縮性カンジダ症に合致する病態像を示していた。培養検査からはC.albicansが検出された。義歯床下粘膜に一致して炎症を認めるため、可及的に義歯を外すことと義歯の清掃を指示した。本患者に対しては、イトリゾール®(イトラコナゾール)が処方され、2週間後には自覚症状は改善し、床下粘膜の発赤は改善した(図2)。逆に、ステロイド投与はカンジダ症の病態を悪化させるリスクがあるため、安易なステロイドの投与は慎むべきである。


図2 初診2週間後の下顎顎堤
図2 初診2週間後の下顎顎堤

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