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2017年3月号 新生児の口腔内腫瘤
4.異所性歯牙腫

  歯牙腫は、歯胚の形成異常から生ずる組織の形態異常で、厳密には真の腫瘍ではないとされている。歯牙腫は複雑性歯牙腫と集合性歯牙腫に分類される。前者は解剖学的な歯の構造を示さない硬組織として、後者は歯の形態が確認できる硬組織として認められ、多くの症例で顎骨内に発生する。ほとんどの場合、無症状であることから、X線検査で偶然発見されることが多い。発育した場合には当該部位の顎骨の膨隆を認め、隣在する他の健常歯の萌出を阻害、歯根の吸収または歯列不正を惹起した場合には、摘出術の適応となる。また、無痛性で極めて緩慢に増大するが、鶏卵大以上になることは稀である。

  好発部位については、複雑性歯牙腫では下顎大臼歯部に、集合性歯牙腫では上顎前歯部または下顎大臼歯部に頻発し、一定ではない。好発年齢は10〜20代であり、若年者に多くみられる。稀ではあるが、顎骨以外の異所性の歯牙腫も報告されている。その多くは歯肉や硬口蓋に発生したとされており、本症例のように顎骨に近接していない軟組織に存在する歯牙腫は極めて稀である。

  新生児であり、有茎性の腫瘤性病変であったため、全身麻酔下で摘出術を行った(図4、5)。有茎性のため頬粘膜からの切除は容易で、出血もごく少量であった。摘出標本から、エナメル質や象牙質など歯の構造が確認できたため、集合性歯牙腫(図6)と診断した。

  術前の画像所見で石灰化物が認められていたため、硬組織が関与した腫瘤病変であることは予想されていたが、歯牙腫の診断は病理組織検査で初めてあきらかとなった。顎骨内だけでなく、軟組織中にも歯牙様の硬組織が発生することを念頭におき、診療にあたる必要があると思われる。

  現在、摘出術からおよそ2年が経過している。若干の頬粘膜の硬直がみられる他は、開口障害もなく、咬合にも異常は認めていない。今後も、厳重に経過観察を行っていく必要があると思われる。

図4 術中所見。切除後
図4 術中所見。切除後
図5 切除後の検体
図5 切除後の検体

図5 病理組織所見
図6 病理組織所見

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