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TopQ&A法律 > 医療広告における広告可能事項の限定解除の要件(2021年12月号)
Q&A
法律(2021年12月号)
Q医療広告における広告可能事項の限定解除の要件
●医療広告について、要件を満たしていれば広告可能事項以外のことも記載可能になると聞きました。その要件と、要件を満たす表記の具体的な例を教えてください。
── 東京都・M歯科
A
医療広告においては、原則として、広告可能な事項は限定されています(医療法6条の5第3項)。もっとも、患者などが自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があります。そのため、省令に規定する要件を満たした場合、広告可能事項の限定を解除し、他の事項を広告できるとされています(以下、限定解除)。
 限定解除が認められるのは、@「医療に関する適切な選択に資する情報であって患者などが自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること」、A「表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること」、B「自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること」、C「自由診療に係る治療などに係る主なリスク、副作用などに関する事項について情報を提供すること」の全部を満たす場合です(ただし、B、Cは自由診療について情報を提供する場合に限ります)。
 以下、厚生労働省が令和3年7月に作成した「医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書」に基づき、医療機関のホームページ上で自由診療としてインプラント治療を広告する場合を想定し、限定解除される場合、されない場合の具体例をいくつか挙げます。
 まず、歯科医師個人の手術・治療件数、新聞や雑誌などで紹介された旨の記載は、@の「医療に関する適切な選択に資する情報」に該当します。もっとも、これらを記載するためには、Aとして電話番号やEメールアドレスなどの問い合わせ先などの記載が必要です。
 Bの「治療内容」について、たとえば「インプラント治療は、失った歯に近い歯を取り戻すことができます」との記載では、具体的な治療などの内容が記載されておらず、要件を満たしません。検査、X線撮影等・検査、骨の移植、手術、仮歯を入れる、最終的な歯を入れるといった治療の流れを具体的に記載し、かつ、各段階の治療内容の説明を具体的に記載することが必要です。
 Bの「治療内容」に関連する治療期間・回数については、「治療期間は患者様の状態により異なります」、「治療期間は1ヵ月〜、治療回数は2回〜」、「治療期間は3〜6ヵ月」といった記載のみでは不十分です。たとえば「治療期間は3〜6ヵ月、治療回数は5〜6回」などと、通常必要とされる治療期間と回数の両方を具体的に記載し、かつ、下限と上限の記載が必要です。
 Bの「費用」について、「料金は患者様の状態により異なります」、「インプラント手術15万円〜」との記載のみでは不十分です。たとえば「インプラント手術20〜30万円(付随手術費用を除く)」などと下限と上限を記載し、かつ、費用の内訳と付随手術の内容・金額を個別具体的に記載する必要があります。
 Cについては、インプラント手術のリスクなどとして「手術中は麻酔が効いていますので心配ありません。術後の痛みはありますが2〜3日でひきます。それ以上に、ブリッジや入れ歯にはないメリットがあります」との記載や、メリットの記載と比較してデメリットを極端に小さな文字で記載することなどは不十分・不適切です。たとえば「治療費が高額で治療期間が比較的長い。外科処置に伴う痛み・腫れ・出血・合併症の可能性がある。お手入れ次第で感染することがある。食べ物が詰まりやすくなることがある。噛む感覚が自分の歯と違う」などと、リスクなどを具体的に記載することが必要です。

井上雅弘
銀座誠和法律事務所

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