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2017年11月号 下顎臼後部の腫脹
3.多形腺腫

処置と経過:臨床経過および画像所見より、血管・神経・小唾液腺由来の嚢胞成分を伴う腫瘍性病変が疑われたが、粘表皮がんなどの悪性腫瘍を否定できない所見を認めたため、組織生検および試験穿刺は行わずに病変の全摘生検を行う方針とし、「右側臼後部腫瘍」の診断にて全身麻酔下で全摘生検術を施行した。術後2年6ヵ月で再発所見なく、現在のところ良好に経過している(図3、4)。

病理診断:H-E染色では、腫瘍は充実成分と粘液成分を貯留した嚢胞状の部分から構成されていた。充実部分は、好酸性あるいは淡明な細胞質を有する筋上皮様腫瘍細胞のシート状ないし錯綜する増殖からなり、脂腺細胞の混在を散見し、わずかに粘液腫様の成分も認めた。核分裂像や細胞異形型は認めず、「多形腺腫」の病理診断となった(図5)。

解説:唾液腺腫瘍のなかで、多形腺腫の発生頻度は45〜75%と文献によって差はあるが、最も高い発生頻度となっている。発生部位は口蓋が最も多く、口唇、頬粘膜、臼後部の順とされ、そのなかで臼後部の発生頻度は0.2〜1.2%との報告もある。小唾液腺腫瘍は、組織学的にも腫瘍細胞の被膜外浸潤や異型性の強い細胞が散見されること、部位によって組織像が異なることがあるため、部分生検のみでは良性悪性の判断が困難との報告や、また舌、口底、臼後部の小唾液腺腫瘍の8〜9割が悪性腫瘍との報告もあり、発生頻度の低い部位における腫瘍の取り扱いについては唾液腺悪性腫瘍の可能性を念頭に置く必要がある。安易な生検や試験穿刺、切開は厳に慎むべきであり、慎重な治療態度が必要である。

図5 術後のMR画像(左側顎関節部矢状断)

図3 術中写真(全摘生検)

図6 術後のCT画像(左側顎関節部矢状断)

図4 摘出物

図6 術後のCT画像(左側顎関節部矢状断)

図5 摘出物病理組織像(a、b:HE染色)



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