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2018年2月号 「小児の口底部の腫脹」
4.唾石症

 唾石症は、青壮年期に顎下腺導管内に好発し、口腔外科領域において数多くみられる疾患であるが、小児期に発症することは少ないとされている。

 その理由としては、(1)唾石が形成されるまでにある程度の期間が必要なこと、(2)唾液流出速度が速いこと、(3)唾液腺管の開口部が小さく核となる異物が進入しにくいこと、(4)安静時の全唾液中におけるCaおよびPの濃度が成人に比べて低いこととされているが、これらの意見を疑問視する報告もある。

 一般に唾石症の診断は、X線写真を用いると比較的容易である。しかし、小児の唾石は一般的に小さいこと、X線透過性が高いこと、石灰化が不十分なことなどから、診断が困難な場合も多く、自験例においても唾石を咬合法X線写真では確認することはできなかった。

 小児の唾石症の場合、症状が発現してから歯科や医科を受診し発見されることが多いが、自覚症状の訴えが適切になされないため、発見が遅れることもあるとされている。一方で、母親が腫脹や黄色の膨隆に気づいて歯科や医科にて診断を受けることや、歯科医師の診察時に無症状ではあるが舌下部異物を指摘されて発見に至ることもある。自験例は、母親からの訴えによって発見することができた。

 真泉らは、外来患者30,700例のうち唾石症患者は125例(0.4%)と報告し、杉本らはわが国において報告された唾石症患者756例の発症年齢について、30歳代が23.2%と最も多く、10歳末満は3.7%と極めて稀であると報告している。わが国における10歳未満の発症頻度は、おおむね0.7〜4.0%と報告されている。

 酒井らは、わが国では過去に記述があった6歳以下の小児の唾石症報告例が30症例あったとし、この30症例について唾石の大きさを検討したところ、10mmを超える比較的大きなものもあったが、そのほとんどが長径3mm以下であったとしている。

 自験例でも、表面麻酔後、顎下腺開口部の浅部唾石周囲に局所浸潤麻酔を施行し、唾石の直上粘膜を切開して容易に3mm程度の唾石を摘出できた(図3)。さらに、術後は縫合なしに容易に止血し、後遺症もなく経過良好であった。

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図3 摘出されたmm程度の唾石
図3 摘出された3mm程度の唾石


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