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2018年2月号 「舌縁部の違和感と口底部の腫瘤」
4.舌下腺腫瘍

 舌下腺に発生する腫瘍は大唾液腺腫瘍の1%と頻度は低いが、腫瘍の90%は悪性腫瘍であり、組織学的には腺様嚢胞がんが多くを占めるとされている。
 腺様嚢胞がんの特徴としては、腫瘍の増大は比較的緩徐であるが、長期経過を経て神経周囲浸潤などに伴う原発巣再発や遠隔転移、とくに高率に肺転移を来しやすいことが挙げられる。また、神経周囲浸潤に伴い、経過中にしびれ、麻痺、疼痛などの神経症状を呈することが多いことも特徴的である。腺様嚢胞がんは、組織学的には導管上皮様細胞と筋上皮様細胞からなる悪性腫瘍で、管状、篩状、充実性の増殖パターンを示す。本腫瘍は周囲組織への浸潤性が高く、とくに神経周囲浸潤が特徴的である。腫瘍は増殖パターンにより、篩状型、管状型、充実型の3型に分類されている。一般的に、充実型の腺様嚢胞がんは、管状型ならびに篩状型の腺様嚢胞がんと比較して予後不良とされ、とくに充実型が腫瘍の30%以上を占める例で、その傾向が強いとする報告がある。しかし、組織型と予後は相関しないとする報告もある。
経過:局所麻酔下に生検を試みたが、腫瘍への到達が困難で生検を断念した。後日、入院のうえ、全身麻酔下に腫瘍を含めて左側舌下腺摘出術を施行した(図3)。病理学的に腺様嚢胞がん(管状型)、pT1N0M0と診断された。術後の補助療法を行うことなく、現在、3年6ヵ月が経過するが、再発、転移なく経過良好である。
病理:腫瘍は1.5×1.5×1.0p大、内部はほぼ均一で、大小の胞巣内部は小型の腫瘍性筋上皮細胞からなり、硝子円柱様構造物を含む。ほとんどの腔は偽腺腔で、少数の腺腔を認める。胞巣周囲は厚い硝子様基質ないし線維性組織に囲まれる。中心部には出血壊死を認める。腫瘍の一部で被膜を欠くが、あきらかな神経周囲浸潤は認めない(図4)。
診断のポイント:唾石症は、臨床所見(顎下腺)、画像所見およびワルトン管開口部からの唾液の流出・性状から鑑別される。ラヌーラは、臨床所見と画像所見から鑑別可能である。舌下腺炎は、血液検査所見(白血球数、CRP、アミラーゼ)と画像所見から鑑別される。

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図3 摘出した腫瘤と黄白色の割面
図3 術中写真
図5 再初診時の口腔内写真。自力では閉口できない状態
図4 病理組織写真(H-E染色、×200)



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