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2019年10月号 「両側頬粘膜からの出血」
4.特発性血小板減少性紫斑病

 特発性血小板減少性紫斑病(Idiopathic Thrombocytopenic Purpura/以下、ITP)は、抗血小板自己抗体により末梢での血小板破壊が亢進し、骨髄での血小板産生の障害も加わって血小板減少を来す後天性の自己免疫疾患である。わが国では、特発性(Idiopathic)に血小板が減少(Thrombocytopenic)し、紫斑(Purpura)を示す疾患として知られているが、病態解析が進み、免疫学的な異常により血小板が減少するという意味で欧米ではImmune ThrombocytoPenia (ITP)の名称が用いられている。
 成人ITP治療の参照ガイド2012年版によれば、ピロリ菌陽性 ITPに対する除菌療法の有効性が示されている。これはピロリ菌に対する抗体が血小板と交差反応を示すためと考えられている。重篤な出血を認める症例や脾摘など外科的処置が必要な症例には、免疫グロブリン大量療法やステロイドパルス療法にて血小板数をすみやかに増加させ出血のコントロールを行い、緊急時には血小板輸血も併用する。また、新たな分子標的薬トロンボポエチン受容体作動薬が適用となり、難治例にも効果が認められている。
 本症例は、口腔内からの出血を主訴に来院し、近内科医院にて抗血小板薬を投与されている症例であった。抗血小板薬プレタール®は血小板凝集抑制作用をもつ薬剤であり、出血傾向となり得るが、本症例では1,000/μLという著明な血小板減少を示したためITPと診断した。鑑別としては白血病による出血傾向も挙げられるが、本症例では、血小板以外の血液像に異常がなく、倦怠感などの全身症状に乏しかったことから白血病を除外した。
 本症例はITPの診断後、当院血液・腫瘍内科に紹介し、即日緊急入院となった。CT検査にて脳、胸部、腹部の出血や脾腫の有無を確認し、緊急の血小板輸血によって出血のコントロールを行い、ピロリ菌陰性であったためステロイドパルス療法、免疫グロブリン大量療法を行った。血小板数は一時改善したが、5ヵ月後に再度血小板減少を認め、現在、トロンボポエチン受容体作動薬投与の検討中である。
 一般的に、ITPの治療が奏効し血小板数が50,000/μL以上であれば抜歯などの口腔内観血処置も可能であるが、本症例の初診時のように1,000/μLと著明な減少があり粘膜からの自然出血、皮下出血などが認められる場合は、頭蓋内、腹腔内の出血により致死的な事態になることも多く、緊急の対応が必要である。

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