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2021年8月号 「口腔粘膜色素異常の鑑別」
2.a:metal tatoo、b:悪性黒色腫、
    c:色素性母斑、d:メラニン色素沈着

 口腔外科臨床のなかで、口腔粘膜色素異常の頻度は比較的高いが、そのほとんどは治療の必要のない生理的なものである。そこで、今回は口腔粘膜色素異常の鑑別について考察する。
 口腔粘膜の色素異常は、おおむね視診で診断が可能である。加えて、経過や既往歴などの問診で、経過観察でよいのか、専門機関への紹介が必要なのかを判断できる。口腔粘膜の色素異常には、内因性または外因性の色素沈着、母斑、悪性黒色腫などがある。
 まず、頻度の高いものとして、内因性による生理的メラニン色素沈着がある。加齢に伴って増加し、歯肉や口唇によく認められる。歯肉では帯状、下唇では斑状の淡い褐色を呈し、無痛性で膨隆はない。Peutz-Jeghers症候群、Addison病、Albright症候群、von Recklinghausen病など全身疾患に伴うものもあり、皮膚色素斑の有無、既往歴の確認などで診断が可能である。一方、外因性のほとんどは金属によるものである。色素沈着周囲の金属補綴物の有無、職業、内服薬などの確認で診断が可能である。一般的に色素沈着は表面平滑であるが、メラニン色素沈着は褐色で多発性、金属による沈着は青紫色で単発性のことが多い。
 色素性母斑はメラニン形成能を有する過誤腫的な増殖物で、口腔粘膜に発生することは稀である。半球状の限局性膨隆としてみられ、表面平滑で軟らかく、潰瘍形成や出血は認めない。色素沈着との鑑別は容易だが、悪性黒色腫との鑑別は、境界が明瞭、出血や壊死を伴わない、色調が均一などである。悪性黒色腫の前駆症状とする見解もあり、専門機関への紹介をお勧めする。
 悪性黒色腫の発生頻度は低いが、早期にリンパ行性・血行性転移を来すため注意を要する。硬口蓋と上下顎歯肉に好発し、腫瘤・潰瘍形成や易出血性を示す。メラニン色素沈着は歯肉に多いが、悪性黒色腫は口蓋に多いという部位的特徴がある。
 また、メラニン色素沈着と比較して深みのある色調を呈することも鑑別の重要なポイントである。色素性母斑とともに腫瘤を形成する色素異常は、専門機関へのすみやかな紹介が望ましい(表1)。


表1 鑑別内容
a 左側上顎臼歯の補綴物周囲に、青みがかった色素異常を認める。表面粘膜は正常で、補綴物の歯頸部はすべて着色と接し、着色は補綴物に沿って拡がっていることから、metal tatoo と診断できる
b 右側下顎小〜大臼歯部に、深みのある色素異常を有する境界不明瞭な腫瘤形成を認める。腫瘤は増大傾向で易出血性を伴っており、母斑よりも悪性黒色腫を第一に疑う
c 右側下顎臼歯部歯肉に、境界明瞭でやや膨隆した無痛性の色素異常を認める。3年前から自覚しており、大きさや性状の変化は認められない。悪性黒色腫よりも色素性母斑を第一に疑う
d 数ヵ月前から、下唇粘膜に淡い色素異常を複数認める。表面は平滑で金属補綴物との関連性もないことから、生理的メラニン色素沈着と診断できる

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