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歯科医師が病気を見つけるとき 7
●東海大学医学部口腔外科学教室 佐々木次郎 + 山崎浩史
口腔扁平 苔癬 口内炎 肝硬変慢性関節リウマチ
 シェーグレン症候群や慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患の原疾患がある場合はもとより、肝硬変があると、難治の口内炎をみることが多い。本号では難治の口内炎から、患者さん自身は自覚していない重要な疾患をみつけることをとりあげた。
◆◆◆ 病気をみつけるとき、
みつけたとき
◆◆◆
 永年、口腔粘膜疾患の患者さんを多数視ている教室の後藤 潤助教授に登場してもらった。

山崎 頬粘膜の扁平苔癬から肝硬変をみつけるときのことをきかせてください。

後藤 図1の症例は44歳の女性です。両側の頬粘膜に扁平苔癬があります。私は、口腔粘膜疾患に興味をもっていたお陰で、周辺の歯科医師、内科医師、眼科医師の方々から多くの患者さんを紹介していただいております。その結果、難治の口内炎の患者さんから多彩な疾患をみることができました。なかでも頬粘膜や歯肉や舌に扁平苔癬があると、肝硬変である確率が高いといえます。この図1の患者さんは、大きな病気の既往はなく、大手術を受けたこともないし、輸血の経験もありません。それでも、肝硬変がありました。

山崎 この症例を初診日に後藤先生に診てもらったら、LC(肝硬変)の検査をするようにといわれました。自己免疫疾患の検査といわなかったのは?

後藤 問診が大切なのです。肝硬変の既往はもちろんですが、大きな手術や輸血歴があれば血液検査が必要です。この患者さんは、輸血歴も大手術の既往もなかったのですが、お肌の色が少しよくなかった。唾液はよく出ていた。そんなことで、まず最初に肝硬変の検査をすすめたわけです。
 健康保険の審査が厳しくなければ、自己免疫疾患の検査も、もちろんやったほうがいいです。

山崎 図1の症例はC型肝炎の抗体陽性で、TTTとZTTも高値だったので、消化器内科に診てもらいました。活動性肝炎ということで、入院してインターフェロン療法を行っています。

後藤 口腔扁平苔癬すなわち肝硬変ということではありません。ご自分で臨床検査をオーダーされない先生方でしたら、「肝臓の検査もしてみたほうがよろしいのでは」という説明で、内科に検査を依頼してください。肝機能の指標によく使われているGOT、GPTは上昇しない例が多いので、TTT、ZTT、HCV、血小板数を含めた肝機能検査をお願いしたほうがいいでしょう。IgG、IgA、IgMなどの免疫グロブリンの検査も依頼してください。

山崎 アフタ性口内炎については?

後藤 慢性再発性アフタといって、口の中のどこかに、ほとんどいつもアフタができていれば、自己免疫疾患を考えます。唾液の分泌が少なければ、シェーグレン症候群を疑います。

山崎 最近は自分で臨床検査をオーダーする開業の歯科医師が増えました。また、内科に依頼した場合の検査値の読み方のポイントは?

後藤 誌面の都合で、項目だけを記します。
 免疫グロブリン、とくにIgG
 抗核抗体
 SS-A、SS-B

山崎 シェーグレン症候群では眼科医や内科医から後藤先生に対診依頼がきていますが。

後藤 最近は口唇腺のバイオプシーをしてから、確定診断をする医師が多くなったためと思います。
図1
扁平苔癬は皮膚にもできるが、口腔粘膜にもできる。口腔では頬粘膜が多い
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