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Q&A
法律(2013年3月号)
Q 講習会の資料の所有権
●学習のため、ある講習会に当院のスタッフを参加させたところ、そのスタッフが講習会で使用したパンフレット、チラシ、CD-ROM等の資料を持ち帰ってきました。それらは院内の学習に有益な内容でしたので、他のスタッフに配布するため、講習会に参加したスタッフに資料のコピーを求めました。しかし、そのスタッフは、資料は自分のものであると主張し、コピーを取ることを拒否しました。そのスタッフに対しては、講習会参加に伴う参加費、交通費、日当等の一連の費用を支給しています。それでも資料はスタッフのものであり、コピーできないのでしょうか。また、院長である私は、そのスタッフに対してどのような説得を試みるべきでしょうか。
──広島県・K歯科医院
A
  業務命令として特定の講習を受けさせ、また費用も支給したという事情に照らせば、当該スタッフが持ち帰った講習会の資料は医院(院長)のものといえます。
  例えば、会社が従業員に対して費用を渡し、業務上必要な物品の購入を命じた場合、実際に物品を購入するのはその従業員ですが、だからといって購入品は従業員のものにはなりません。当然、会社のものです。ご質問のケースも本質的にはこれと同じことです。
  従いまして、説得を試みるのであれば、このような身近な例を持ち出してみるのも1つの方法かもしれません。
  もっとも、およそ常識的とはいえない当該スタッフの態度に照らせば、先生が紳士的に説得を試みても奏効しない可能性があると思います。そうであれば、その講習会の運営母体に問い合わせ、可能であればそこから直接資料をもらうほうが早いでしょう。
  加えて、当該スタッフに対しては、そのような非常識な態度に及ぶのであれば、今後は医院の費用で研鑽させないと端的に通告してよいと思います。
  また、以後このような問題を生じさせないため、今後は、医院の費用で参加した講習会の資料や購入した教材等はすべて医院の所有であることを事前に確認しておいたほうがよいと思われます。
  ただし、いくら当該資料が医院のものであるといっても、例えば当該スタッフが資料を私用ロッカーや鞄の中に保管しているような場合、無断でこれを取り出しコピーすることは避けるべきです。そのような行為は当該スタッフのプライバシー侵害に当たり不法行為とされる危険がありますし、形式的には窃盗罪に該当する可能性も皆無ではありません。
  なお、ご質問とは事情が異なりますが、逆に医院が外部から依頼を受けて講習会を行うこととなり、スタッフに資料作成や講習を行わせた場合、その資料の著作者は当該スタッフと医院(医療法人または先生個人)のどちらかといった問題が生じます。
  この点については条文と判例があります。当該資料が法人の著作物といえるためには、(1)著作物が使用者の発意に基づいて作成されたものであること、(2)法人等の業務に従事する者が作成したものであること、(3)従業者が職務上作成した著作物であること、(4)法人等が自己の名義の下に公表する著作物であること、(5)著作物作成時における契約、勤務規則その他に別段に定めがないこと、の要件を満たす必要があります。
  そのため、上記の事例において、当該資料を医療法人または先生の著作物としたいのであれば、上記の要件を意識する必要があります。
  なお、(4)については、裁判例は「講師名に付された被告会社の名称は、原告の所属する会社名を記載したにすぎないものと理解されるのが通常」としています。そのため、同じく当該資料を医院の著作物としたいのであれば、単にスタッフの氏名に医院名を冠するだけでは足りず、医療法人または先生個人が作成名義人(著作者)であるとわかる方法で、その名称を明記する必要があります。

金田 英一銀座誠和法律事務所

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