歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
TopQ&A法律 > 歯科医院の売買(2013年5月号)
Q&A
法律(2013年5月号)
Q 歯科医院の売買
●後継者がいないなどの理由により、歯科医院を第三者に売り払う場合、どのような点に注意すべきでしょうか。また、第三者から歯科医院を買い受ける場合はどのような点を考慮すればよいのでしょうか。歯科医院の売買をめぐる法律上の問題点について、お教えください。
──青森県・Z歯科
A
  歯科医院の売買(譲渡・譲受)は、イメージとしては、医療法人であれば運営許可や法人格を引き継ぐこと、個人医院であれば医院全体を1つのパッケージとして引き継ぐことを思い浮かべる方が多いと思います。確かに究極的な目的はそのとおりなのですが、その目的達成のため、種々の法律関係の処理が要求されます。
  すなわち、歯科医院経営には、開設者だけでなく、第三者と法律関係のある事項が多々あります。例えば、開業地の不動産については、賃貸であれば賃貸人との賃貸借関係も調整しなければなりません。自己所有であれば、譲受人との間で使用権原に関する契約を締結しなければなりません。リース物件も同様に調整が必要です。このような法律関係を1つずつ解消していかなければなりません。
  具体的に見ますと、まず歯科医院を売買する場合、開業地の不動産が賃貸であれば、賃貸人に賃借人の名義変更をお願いすることになります。この際、契約内容によっては、旧賃借人が差し入れていた敷金・保証金が新賃貸借契約に引き継がれてしまうこともあり得ますので、譲渡人は注意が必要です。
  開業地の不動産が譲渡人の所有である場合、譲受人との間で、新たに不動産に係る賃貸借契約または使用貸借契約を締結する必要があります。そして、厚生省健康政策局長通知によれば、医業経営の継続性の観点から賃貸借期間は長期確実であることが望ましいとされていますので、例えば自宅開業している歯科医院を譲渡する場合には、そのような長期の賃貸借または使用貸借を許容できるのか検討する必要があります。場合によっては、建物の売却も含め検討する必要があるかもしれません。なお、譲受人が、医院の売買代金の一部を分割払いする趣旨等で、譲渡対価を低額にしつつ、新たに設定された賃貸借契約の賃料を相場よりも増額する方法を希望することも考えられます。このような方法でも当事者が合意すれば基本的に問題ないのですが、近隣の土地、建物等の賃料と比較して著しく高額な場合には余剰金配当の禁止(医療法54条)に抵触する危険があるため、注意が必要です。
  リース物件については、譲受人がリース物件を引き続き使用することを希望すれば、名義変更手続を執ることになりますが、この場合、リース会社の同意が必要です。譲受人が継続使用を希望しない場合、譲渡人が処理することになりますが、リース契約は途中解約できないのが通常ですので、そのままリース料を支払って使用を継続するか、残りのリース料全額を支払って解約することになります。この場合の費用負担についても、医院の売買に絡めて協議すべきです。また、譲受人が継続使用を希望するもののリース会社が名義変更に同意しない場合は、譲渡人が残債務を全額支払って契約関係を終了させてから譲渡したり、リース契約は現状のままとして以後のリース料相当額を譲受人から譲渡人に支払う合意をするなどの対策が必要となります。もっとも、後者については、譲受人による不払いのリスクを譲渡人が負い続けることになるため、譲渡人にとってはできれば避けたほうがよい方法です。また、リース契約に保証人が付いていれば、保証人変更等の処理が必要です。
  この他にも、従業員の雇用関係や、医療法人の譲渡の場合には出資持分の譲渡にかかわる問題等、歯科医院の売買には多様な問題がありますので、専門家に相談されることをお勧めします。

金田 英一銀座誠和法律事務所

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
<<法律一覧へ戻る
※過去に制作したものなので、現在の法令と異なる場合がございます。
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド