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TopQ&A法律 > モンスターペイシェントへの対応(2013年7月号)
Q&A
法律(2013年7月号)
Q モンスターペイシェントへの対応
●モンスターペイシェントから民事裁判を起こされています。患者が弁護士に委任したので、こちらも弁護士に委任し対応してもらっているのですが、患者の弁護士には歯科医学の知識がないようで、医学的根拠のない主張を繰り返しています。こちらの弁護士には、どのような対処をお願いすればよろしいでしょうか。
──埼玉県・M歯科
A
  結論から言いますと、淡々と反論してもらうことがほぼ唯一の対処方法です。
  一般論として、我々弁護士の業界では、医療・歯科医療事件は専門性ある分野と認識されています。しかし、弁護士資格があれば、事件の種類や専門性の有無にかかわらず、どのような事件でも受任できます。また、弁護士には認定医・専門医制度のような専門性を担保する制度はありません(新設しようとする動きはあるようですが)。
  そのため、依頼者の正当な利益を保護するという観点から問題がないわけではありませんが、実際として、歯科医療に詳しくない弁護士が歯科医療事件を受任する可能性は常にあるのです。
  これは、医療・歯科医療事件に限った話ではありません。他にも、建築事件、特許事件、税務事件等も専門性ある分野と言われていますが、同様のことが起こり得ます。
  ところで、どれだけ酷い、事実無根の主張をされても甘受しなければならないのかというと、必ずしもそうではありません。
  例えば、原告の主張のなかに度を超した中傷や批判が含まれている場合には、それが先生に対する名誉毀損になることもあります。また、訴訟提起自体が違法であるとされる可能性もあり得ます(「濫訴」といいます)。
  濫訴に該当するか否かの基準については、最高裁判例があります。最高裁によれば、「民事訴訟を提起したことが相手方に対する違法な行為といえるのは、当該訴訟において提訴者の主張した権利または法律関係が事実的法律的根拠を欠くものである上、提訴者がそのことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である」とされています。裁判を受ける権利は憲法で保障された権利ですので、訴訟内容が多少不合理であっても違法とはなりません。社会通念上許容されない、著しく不当な場合だけが違法と評価され得るのです。
  しかしながら、専門性ある事件では、どうしても原告よりも被告の知識量・情報量が優っています。歯科医療事件においては、原告は患者であり、被告は歯科医師です。被告の弁護士は、歯科のことがわからなければ依頼者に質問できますが、原告の弁護士には歯科の専門知識の不足を補ってくれる協力者は通常いません。原告側は、協力医を探すところから始める必要があります。
  このように、専門性ある事件においては構造的に知識量・情報量の格差が存在しますので、善し悪しはさておき、原告側の主張に歯科医学的な不合理性が多少あったとしてもやむを得ない面があります。そのため、歯科医療事件において濫訴と評価されるのは、不当であることが通常の事件よりもいっそう明らかな場合に限られると考えられます。
  従いまして、ご質問のケースでは、基本的には淡々と反論し、裁判所に正しい判断を求めるほかありません。もっとも、仮に原告の主張のなかで名誉毀損に該当するような誹謗中傷があれば、例えば代理人弁護士を通じてそのような主張は控えるよう忠告してもらったり、場合によっては何らかの法的手続の検討を依頼する必要があるかもしれません。
  また、例外的ですが、訴えの基礎となる事実が明らかに虚偽であるなど、極めて悪質な事情があれば、濫訴として反対に原告を訴えることを検討することもあり得ると思います。

金田英一銀座誠和法律事務所

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