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法律(2014年7月号)
Q 歯科医師の応召義務
●当院では、診療終了後も、医院にかかってきた電話を自宅に転送し、急患に対応しています。ある日の診療終了後、自宅で晩酌をしているときに、患者さんから「治療中の歯が痛むのでいますぐ診てほしい」という電話がありました。すでに飲酒していることもあり、「いまは処方した鎮痛剤をお飲みになり、明日の朝一番で医院に来てください」と言って診療を拒否してしまいました。これは、応召義務違反にあたるのでしょうか。
── 石川県・T歯科医院
A
  医師法19条1項、歯科医師法19条1項は、医師および歯科医師の応召義務を定めています。具体的には、歯科医師法19条1項は、「診療に従事する歯科医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」と規定しています。すなわち、ご質問のケースが応召義務違反に該当するか否かは、「正当な事由」の有無によります。
  この「正当な事由」の有無は、諸般の事情を総合的に考慮して判断されるので、明確に回答することは困難です。しかし、過去に厚生省が示した行政解釈がいくつかあり、これらが参考になりますので、以下、引用します。
1.昭和24年9月10日医発第752号厚生省医務局長通知
  ⅰ医業報酬が不払であっても直ちにこれを理由として診療を拒むことはできない。
  ⅱ診療時間を制限している場合であっても、これを理由として急施を要する患者の診療を拒むことは許されない。
  ⅲ特定人例えば特定の場所に勤務する人々のみの診療に従事する医師又は歯科医師であっても、緊急の治療を要する患者がある場合において、その近辺に他の診療に従事する医師又は歯科医師がいない場合には、やはり診療の求めに応じなければならない。
  ⅳ天候の不良等も、事実上往診の不可能な場合を除いては「正当の事由」には該当しない。
  ⅴ医師が自己の標榜する診療科名以外の診療科に属する疾病について診療を求められた場合も、患者がこれを了承する場合は一応正当の理由と認め得るが、了承しないで依然診療を求めるときは、応急の措置その他できるだけの範囲のことをしなければならない。
2.昭和30年8月12日医収第755号厚生省医務局医務課長回答
  医師法第十九条にいう「正当な事由」のある場合とは、医師の不在又は病気等により事実上診療が不可能な場合に限られるのであって、患者の再三の求めにもかかわらず、単に軽度の疲労の程度をもってこれを拒絶することは、第十九条の義務違反を構成する。
3.昭和49年4月16日医発第412号厚生省医務局長通知
  休日夜間診療所、休日夜間当番医制などの方法により地域における急患診療が確保され、かつ、地域住民に十分周知徹底されているような休日夜間診療体制が敷かれている場合において、医師が来院した患者に対し休日夜間診療所、休日夜間当番院などで診療を受けるよう指示することは、医師法第十九条第一項の規定に反しないものと解される。
  ただし、症状が重篤である等直ちに必要な応急の措置を施さねば患者の生命、身体に重大な影響が及ぶおそれがある場合においては、医師は診療に応ずる義務がある。
  飲酒・酩酊が「正当な事由」に該当するか否かを直接示したものはありませんが、その時点の飲酒量や酩酊度によっては、想定される重篤度との比較衡量も必要でしょうが、「事実上診療が不可能」であり、「正当な事由」があるので、応召義務に反しないと言い得ると思われます。

金田英一銀座誠和法律事務所

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