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TopQ&A法律 > 情報漏洩する歯科商店やスタッフへの制約(2015年6月号)
Q&A
法律(2015年6月号)
Q 情報漏洩する歯科商店やスタッフへの制約
●出入りの歯科商店や当院のスタッフが、当院のチェアー台数、スタッフ数、使用している材料や患者数などを、近隣のライバル医院に話しているようです。たいへん迷惑しているので、歯科商店やスタッフに対し、「他院に情報を漏らさない」などと制約させたり、損害賠償を請求したりできるのでしょうか。
── 福井県・R歯科
A
  ご質問に挙げられている事項は、いずれも不正競争防止法で保護される営業秘密に該当しません。そのため、それらについて歯科商店やスタッフが他院に口外しても、原則として法的には問題となりません。
  もしどうしても口外を防止したければ、歯科商店やスタッフとの契約のなかに守秘義務条項を設けることにより、守秘義務を負わせることは可能です。とくに、歯科商店が、顧客である先生の院内の情報を他院に漏らすのは、職業倫理的・道義的にいかがなものかと思いますので、そのような守秘義務条項は設けやすいのではないかと推測します。
  また、守秘義務条項を設けるまでしなくとも、それらの情報を他院に漏らさないよう申し向ければ、歯科商店もスタッフも意識を改めるかもしれません。
  損害賠償についてですが、まず何も取り決めがなければ口外は違法となり得ませんので、この場合、損害賠償請求は不可能です。
  守秘義務条項を設け、かつ、ご質問にある情報が守秘義務の範囲に含まれるとされた場合、口外は守秘義務違反となり、違法となり得ます。そのため、理論的には、損害賠償請求も不可能ではありません。
  しかし、立証が困難です。他人による違法な行為があったとしても、損害賠償請求する側が、当該行為によって損害が発生したこと(因果関係)と損害額を具体的に立証しなければならないからです。
  ご質問から想定できるのは、たとえば、他院が先生の医院よりもチェアー台数、スタッフ数をことさらに多くし、その規模を自院の優位性の1つとして宣伝したり、先生の医院で使用している材料と、それに関するネガティブな情報を患者に伝え、先生の営業を妨害するといったケースでしょうか。そのようなケースでは、まずは実際に先生の医院の患者数・売上が減少したこと、すなわち損害が発生したことが大前提ですが、損害発生の原因が上記のごとき他院の行為、ひいては歯科商店やスタッフによる口外(守秘義務違反行為)であることを立証することは極めて困難です。
  したがいまして、仮に歯科商店やスタッフに守秘義務違反があったとしても、現実的には、損害賠償請求は難しいでしょう。
  守秘義務違反に対する実際的な措置としては、歯科商店の本社に、守秘義務違反の事実を告げて担当者を交替してもらう、端的に取り引きする歯科商店を変更する、スタッフを戒告、減給等の懲戒処分することなどと思われます。なお、懲戒処分については、就業規則ないし雇用契約書であらかじめ規定しておかなければ行えませんので、注意が必要です。

金田英一銀座誠和法律事務所

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