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Q&A
歯科一般 (2017年11月号)
Q フッ化物イオン濃度1,000〜1,500ppmの歯磨剤の使用上の注意点
●フッ化物イオン濃度1,000ppmを超える歯磨剤が承認され、濃度1,000〜1,500ppmの新製品が発売となっています。ブラッシング指導や保健指導において、今後注意すべき点はありますか。
──東京都・S歯科
A
フッ化物配合歯磨剤は、約15億人が利用しており、世界で最も普及しているフッ化物応用です1)。わが国の歯磨剤に占めるフッ化物配合歯磨剤の市場シェアは、2010年以降90%に達し、この普及が国内外の子どもたちのう蝕を減少させた大きな要因であると報告されています2)
1.フッ化物配合歯磨剤の安全性
  これまで、わが国における歯磨剤に配合できるフッ化物イオン濃度の上限は、「薬用歯みがき類製造販売承認基準」によって1,000ppm以下に規制されていました3)。一方、ISO(国際標準化機構)では1,500ppmが上限で4)、わが国は世界標準より500ppm低く設定されていました。
  しかし、平成29年3月、フッ化物イオン濃度1,000ppmを超える歯磨剤が厚生労働大臣によって承認され5)、ようやく世界標準となりました(今回承認されたフッ化物は、現在日本で市販されている3種類のうち、フッ化ナトリウムとモノフルオロリン酸ナトリウムで、フッ化スズは未承認)。同時に、日本歯磨工業会では、フッ化物イオン濃度1,000〜1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤に記載すべき注意表示等に関する自主基準を策定しました6)。その注意表示は、「6歳未満の子供には使用を控える」、「6歳未満の子供の手の届かない所に保管する(記載を省略してもやむを得ない)」、「配合濃度を直接の容器等に記載する」などです。
  これらの注意表示を見た患者さんが、安全性に疑問を抱いたり、高濃度フッ化物配合歯磨剤の有効性について知りたいと考えたりするかもしれません。そこで、保健指導に使えそうな有効性と安全性に関する内容を表1にまとめました。

表(1) 1,000〜1,500ppmフッ化物配合歯磨剤の有効性と安全性に関する保健指導内容

・フッ化物配合歯磨剤は、小児う蝕だけではなく、成人の根面う蝕にも有効
・フッ化物配合歯磨剤全体のう蝕抑制率は全体で23〜32%
・フッ化物イオン濃度が1,000ppmを超える歯磨剤の場合は、500ppm上昇するごとに臨床効果が6%上がる



・フッ化物イオン濃度の上限1,500ppmは世界標準であり、世界で15億人が利用している
・厚生労働省をはじめ、世界150以上の保健専門機関がフッ化物配合歯磨剤を含むフッ化物応用を推奨している
・成人用歯ブラシの全幅に1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤を1g付けて、それを全部(フッ化物量1.5r)飲み込んだとしても中毒量(体重20sで100r)には達しない

表(2) フッ化物配合歯磨剤の効果的な使用方法
・使用歯磨剤量は、最低でも歯ブラシの半分以上(成人で0.5 g以上)使用する
・ブラッシング途中の吐き出しは、できるだけ控える(1回程度まで)
・使用後の洗口は、約15mLの水を口に含み約5秒間の洗口を1回だけにする
・使用後の飲食は、できるだけ控える(2時間程度)
2.フッ化物配合歯磨剤の効果
  フッ化物配合歯磨剤は、小児や若い成人の歯冠部う蝕だけではなく、成人の根面う蝕の予防にも有効であり、高齢者の残存歯数が増加している現代において、非常に有用なう蝕予防手段となります2)。う蝕抑制率は23〜32%7)程度であり、フッ化物洗口、水道水フロリデーションに次いで、高い予防効果が期待できます。また、フッ化物イオン濃度による影響としては、1,000ppmを超える場合は、500ppm上昇するごとに臨床効果が6%上がると報告されています8)
  安全性については、まず、「フッ化物イオン濃度1,500ppmのフッ化物配合歯磨剤は、世界標準であり、日本はそれにようやく追いつき、厚生労働省をはじめ世界150以上の保健専門機関が、フッ化物配合歯磨剤を含むフッ化物応用を推奨しています」などと説明し、さらに「1,500ppmフッ化物配合歯磨剤を成人用の歯ブラシの全幅に1g付けた場合のフッ化物量は1.5rです。体重20s(6歳児の平均体重)のフッ化物見込み中毒量は100rですから、仮にその歯磨剤1gをすべて飲み込んだとしても、見込み中毒量には達しません」のような説明も加えるとよいでしょう。
  最後に、フッ化物配合歯磨剤をより効果的に利用するための使用方法9)表2に示しました。参考にしてください。

【参考文献】

1)Rugg-Gunn A: Preventing the preventable-the enigma of dental caries. Br Dent J , 191, 478-488, 2001.
2)日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会:フッ化物局所応用マニュアル.社会保険研究所, 東京,77-124,2017.
3)厚生労働省医薬食品局長:薬用歯みがき類製造販売承認基準について.https://www.pref.saitama.lg.jp/a0707/documents/0325-37.pdf(2017年8月1日アクセス).
4)ISO 11609:2010 Preview:Dentistry -- Dentifrices -- Requirements, test methods and marking.https://www.iso.org/standard/38010.html(2017年8月1日アクセス).
5)薬生薬審発 0317 第1号,薬 生 安 発 0317 第 1 号,平成29年3月17日,フッ化物を配合する薬用歯みがき類の使用上の注意について. http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T170317I0030.pdf(2017年8月1日アクセス).
6)日本歯磨工業会:高濃度フッ化物配合薬用歯みがきの注意表示等について.http://www.hamigaki.gr.jp/hamigaki1/fusso04.html(2017年8月1日アクセス).
7)Fejerskov O, et al: Fluoride in Dentistry, 2nd ed. Munksgaard, Copenhagen, 329, 1996.
8)WHO Expert Committee on Oral Health Status and Fluoride Use: Fluorides and oral health. WHO technical report series, Geneva, 26-33, 1994.
9)荒川浩久:1,000 ppmを超えるフッ化物イオン濃度の歯磨剤が承認された−フッ化物イオン濃度が世界標準に達した日本のフッ化物配合歯磨剤−.ザ・クインテッセンス,36:43-44,2017.

晴佐久 悟1,4) 荒川浩久2,4) 眞木吉信3,4)
● 1)福岡看護大学
2)神奈川歯科大学大学院 口腔科学講座
3)東京歯科大学 衛生学講座
4)日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会

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