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TopQ&Aその他 > わが国における 歯科技工士の減少と対策(2018年4月号)
Q&A
その他 (2018年4月号)
Qわが国における歯科技工士の減少と対策
●歯科技工士学校の閉校が相次ぎ、このままでは将来的に歯科技工士(とくに地方)がいなくなると思います。歯科技工士学校側は学生数の減少を止める対策を講じているのでしょうか。教えてください。
──京都府・N歯科
A
1.歯科技工士養成施設における 現状と対策
  歯科技工士養成施設は、本稿執筆時点(平成30年1月)で全国に52校ありますが、そのうち4校の施設が今年度または次年度から学生募集を停止し、閉校などの措置をとることになりました。こうした傾向はここ20年ほど続いており、たとえば、平成12年には歯科技工士養成施設は全国に72校ありましたが、現状では前述のとおりです。この背景にあるのが、歯科技工士養成施設の定員割れです。平成28年度では、全国の歯科技工士養成施設52校中43校において定員割れが生じています1)
 さらに、こうした状況と関連するように、就業している歯科技工士についても若年層の割合が大きく減少しています。図1は年齢階級別にみた就業歯科技工士数の推移を示しています。これをみると、とりわけ20、30歳代の減少傾向が顕著になっています。今後も若年層の減少傾向が続くとともに、高齢層の就業者の退職が加わることにより、歯科技工士数全体として大幅に減少することは容易に想像できます。
 歯科技工士養成施設の定員割れは学校経営に影響を及ぼすことから、各施設も高校訪問などを通じて、学生数の確保に力を入れているようです。なかには、中学生などに対して、理科と歯科技工学を関連付けた出張授業を行い、理科で学ぶ内容が実際に歯科技工士という職業において活かされていることを知る機会を提供する興味深い取り組みも行われています2)。しかし、養成施設におけるさまざまな取り組みも実を結ぶものばかりではなく、定員充足率は減少の一途を辿っています。一方で、経営基盤の安定と教育の質とは表裏一体のものであり、定員割れ対策として入学者の基準を必要以上に下げることは、さらなる悪循環に繋がる可能性がある点にも留意すべきです。
2.適正な歯科技工士数の確保を目指して
 歯科技工士数の減少は、養成施設への入学者減少の問題だけではなく、他にも多くの原因があると考えられます。歯科技工士国家試験の合格者数は、最近ではおおむね1,000人ほどで推移していますが、このうちの多くが歯科技工士としての仕事を継続せず、離職に至っていることを仄聞します。実際に、平成28年末における歯科技工士免許取得者118,551人のうち、就業者数は34,640人(就業率29.2%)であり、約7割の者が歯科技工士として就業していない状況にあります。歯科技工士の就業率が低い原因として、労働条件、職場環境、家庭事情などのさまざまな理由が考えられます。このことからも、歯科技工士数の減少に歯止めをかけるためには、養成施設への入学者数の増加に力点を置くよりも、有資格者が仕事を継続できる環境を整えるための対策を講じることを優先すべきであると考えます。
 昨今、補綴物を作製する際には、そのほとんどが歯科技工士に委ねられています。また、今後の超高齢社会を踏まえると、補綴物作製数は当面は横ばいを維持することが予測されます3)。国民に適切な歯科医療サービスを提供するためにも、適正な歯科技工士数の確保は重要な課題となります。
 歯科技工士に関する諸問題は、現在、国や関係団体などにおいて議論が活発化されているようです。われわれ歯科医療従事者は、こうした動向に対して引き続き注視していく必要があります。
 
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【参考文献】

1)厚生労働省:平成30年度予算概算要求において新規に要求する事業に係る行政事業レビューシート.
http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/gyousei_review_sheet/2017/h30_saisyu.html
(2018年1月23日アクセス)
2)大島克郎,安藤雄一,大内章嗣,他:歯科衛生士および歯科技工士の復職支援等に関する事例の収集と検討.厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「歯科衛生士及び歯科技工士の復職支援等の推進に関する研究」,平成28年度総括・分担研究報告書:24-45,2017.
3)大島克郎,安藤雄一,青山 旬,他:歯科技工に関する需給分析─社会医療診療行為別調査/統計を中心とした義歯装着数の推移と将来予測─.厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「歯科衛生士及び歯科技工士の復職支援等の推進に関する研究」,平成28年度総括・分担研究報告書:133-144,2017.

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図2 切除後の検体
図1年齢階級別にみた就業歯科技工士数の推移
(厚生労働省:衛生行政報告例〔隔年報〕を引用改変)

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大島克郎
日本歯科大学東京短期大学 歯科技工学科


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