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Q&A
補綴(2019年5月号)
Q ロカテック処理用いたリラインとは
●ノンメタルクラスプデンチャーのリラインにロカテック処理が有効と聞きました。ロカテック処理というのはどのようなものなのでしょうか。
── 長野県・T歯科
A
1.ノンメタルクラスプデンチャー用樹脂と直接リベース材の接着
  ノンメタルクラスプデンチャー用樹脂と直接リベース材との接着に関しては、濱中一平先生の研究1)があります。熱可塑性樹脂にバルプラスト、ルシトーンFRS、エステショット、レイニング樹脂を用いており、対照として加熱重合レジンのアクロンを用いて、種々の表面処理を行った後にリライン用レジンとの接着強度を調べています。
 日常臨床で使用することが多い直接リベース材は、通常モノマーに多官能性メタクリレートを使用しており、加熱重合レジン床(PMMA)とは直接接着しないため、レジン床粘膜面にジクロロメタンで表面処理を行ってから接着します。上記の研究によると、その接着力はほぼ8.8MPになっています。一方、ノンメタルクラスプデンチャー用の樹脂であるバルプラストやルシトーンFRSは、ジクロロメタンを使った表面処理ではそれぞれ0.2MPa、0.1MPaでほとんど接着していません。同じ熱可塑性樹脂であってもエステショットとレイニング樹脂はそれぞれ4.7MPa、9.0MPaであり、リベース材との接着は認められます。
 従来いわれているように、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂はいわゆる即重(MMA系常温重合レジン)と直接接着しますが、ポリアミド系樹脂は即重とは直接接着しないため、チェアーサイドでの修理ができないとされています。しかし、トライボケミカルシリカコーティング表面処理を行うと、ほとんど接着力のなかったポリアミド系のバルプラストやルシトーンFRSでもそれぞれ15.6MPa、18.6MPaの高い接着力が得られます。

2.ロカテック処理とは
  このトライボケミカルシリカコーティング表面処理は、3M ESPE社のロカテックボンディングシステム(ロカテック処理)と呼ばれるものです2)。元来はセラミックやコンポジットレジン、金属の修復物をレジン系の接着材と強固に接着させるための表面処理方法です。シリカコーティングされた酸化アルミナを被着面にブラスト処理をすると、その被着面には部分的に高熱が発生して、シリカが焼き付いて残り、表面にシリケート層が形成されます。接着のメカニズムは、この層にシランカップリング剤でシラン処理を行うことによって、レジン系の接着材での化学的な接着を可能にするものです。

3.ロカテック処理を用いたリライン
ロカテックシステムを用いたリラインの流れですが、リラインする面の清掃と表面の接着面積を広げるために、110㎛のアルミナブラスト(Rocatec Pre:3M ESPE)処理を行います。その後、シリカコーティングされた110㎛のアルミナブラスト(Rocatec Plus:3M ESPE)処理により、レジン表面にSiO2をコーティングします。これによって、シランカップリング剤(Espesil:3M ESPE)を介してレジンと接着が可能になります。ただし先の論文1)によると、直接リベース材をその上に盛っても接着力は向上しますが、シランカップリング処理面にスーパーボンドを筆積みして、半硬化の状態で、直接リベース材を盛ってリラインするとさらに接着力は向上しています。
 以上が、ロカテックシステムを用いたリラインの方法ですが、一般臨床で110㎛のアルミナブラストを使うことはあまりないかと思います。若干接着力は劣るかもしれませんが、ノンメタルクラスプデンチャーのリラインをチェアーサイドで行う場合には、CAD/CAM冠の内面接着処理に用いる30㎛シリカコーティング酸化アルミナ(コジェットサンド:3M ESPE)でも効果があると思われます。
 ただし、メタルフリーのノンメタルクラスプデンチャー(フレキシブルデンチャー)では、義歯床の変形が大きく、リベース材との硬度の違いで、リラインした部分の破折や剥がれが起こることが考えられるため、注意しなければなりません。したがって、リラインする義歯床部分は、あくまでも変形の少ない金属構造物で補強されていることが必要であると思われます。

【参考文献】

1)Hamanaka I, Shimizu H, Takahashi Y: Bond strength of a chairside autopolymerizing reline resin to injection-molded thermoplastic denture base resins. J Prosthodont Res. 2017; 61: 67-72.
2)3M ESPE: ROCATEC Bonding –Scientific Product Profile- 1-29.

谷田部 優東京都・千駄木あおば歯科

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