歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
Top診断力てすと > 2017年12月号  「先生、口が閉じません」

診断力てすと  診断力てすと

2017年12月号 「先生、口が閉じません」
4.ru3mの異所性埋伏

 閉口障害とは、口が閉じない状態をいう。閉口障害の最も発生頻度の多いものとして、顎関節脱臼や関節円板の異常を伴う顎関節症が挙げられる。本症例も、閉口障害から顎関節症を疑われての紹介受診患者であった。顎関節脱臼では、耳前部が窪んで特徴的な間延びした顔貌となることや、X線写真により容易に診断を確定することができる。しかし、顎関節の異常を疑った場合では、開口量や下顎頭滑走障害に加えて咬筋や側頭筋の圧痛などの理学所見、さらにX線写真やCT、MRI画像所見から総合的に診断することが必要となる。下顎骨骨折や頬骨弓骨折、口腔顎顔面領域の腫瘍なども、比較的閉口障害の原因として頻度の高い疾患といえる。

 また、咬筋などの咀嚼筋の麻痺、パーキンソン病や筋肉の不随意運動による顎口腔ジストニアなども閉口障害を生じることがあり、一般歯科医にとって閉口障害を的確に診断することは必ずしも容易ではない。開口障害と比較して、閉口障害は食事摂取に大きく関与するため、迅速な対応が求められる。そのため、閉口障害の原因をある程度スクリーニングすることは、必要な知識・技術と思われる。

 本症例は、上記診断のいずれでもなく、異所性に埋伏したlu3_lが頬骨下稜へ突出し、その犬歯歯嚢が何らかの原因による炎症で下顎筋突起と癒着を起こしたことが原因であった。 CT(図4)において、犬歯歯冠周囲に歯嚢と考えられた透過像が筋突起と連続していた。そして手術では、歯冠周囲組織が筋突起と癒着していたために、下顎の開閉に合わせて犬歯が動揺する所見を確認した。lu3_lを抜歯すると、筋突起が露出した(図5)。本症例では、lu6_laの抜歯以降、義歯などの影響によりlu3_lが圧迫され、筋突起方向へ歯牙移動が生じたのではないかと推測している。埋伏歯による閉口障害の前例はたいへん少ないが、これまでにも上下顎の埋伏歯が移動することで何らかの障害を来すことは多く報告されている。

 2008年時には、埋伏歯抜歯について本人の同意が得られなかったが、埋伏歯のリスクについて改めて考えさせられる症例であった。

歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
図4 再初診時CT写真(矢印:異所性埋伏歯:)
図4  再初診時CT写真
(矢印:異所性埋伏歯:lu3_l
図5 再初診時の口腔内写真。自力では閉口できない状態
図5 lu3_l抜歯時の手術写真


<<一覧へ戻る
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド
歯科,dental,Dental Diamond,デンタルダイヤモンド